コンタクトセンター(コールセンター)のAI活用は、海外で急速に実用段階へ進んでいます。たとえば、修理受付の通話65%を自動完結させた事例や、顧客満足度98%を達成した事例も登場しています。本記事では、コンタクトセンターのAI活用における海外の先行事例7選から最新動向を整理し、日本市場での可能性を考察します。
vottiaは、チャットと音声の両方に対応するAIエージェントプラットフォーム「maestra」を提供し、修理受付や住宅サポートといった複雑な業務領域でのAI活用に取り組んでいます。このように、コンタクトセンターのAI活用に関する海外の先行事例から学べるベストプラクティスを日本市場に展開することが、vottiaのミッションです。
目次
AIエージェントとは?──コンタクトセンターのAI活用における従来のボットとの違い
AIエージェントとは、従来のFAQチャットボットとは異なり、顧客との多段階の対話を自律的に進め、業務フロー全体を担うAIシステムです。つまり、単なる質問応答にとどまらず、「症状のヒアリング→原因の推定→対処法の案内→修理手配」といった複数ステップを完結させます。コンタクトセンターにおけるAI導入の最前線では、このようなAIエージェントが活用されています。
具体的には、以下のような違いがあります。
| 項目 | 従来のFAQボット | AIエージェント |
|---|---|---|
| 対応範囲 | 定型的なQ&A | 複数ステップの業務フロー全体 |
| 対話能力 | キーワードマッチ | 文脈を理解した自律的な対話 |
| チャネル | テキストのみ | チャット+音声の両方 |
| 業務連携 | なし(回答のみ) | 予約手配・発注・エスカレーション |
| 構成 | 単体 | マルチエージェント(専門分業) |
このように、AIエージェントは従来型ボットの延長ではなく、業務プロセス全体を自動化する新しいカテゴリといえます。
なぜ今、コンタクトセンターのAI活用が海外で急成長しているのか?
この領域の成長を象徴するのがSierra AIです。元Salesforce共同CEOのBret Taylorが2023年に創業し、カスタマーサポート特化の会話型AIプラットフォームを提供しています。その結果、創業からわずか21カ月でARR(年間経常収益)1億ドルを突破しました。さらに、2025年には評価額が1兆円を超えています。
また、SoFi、SiriusXM、WeightWatchersなどの大手企業がSierraを採用しています。特にWeightWatchersでは、AIエージェントが顧客セッションの約70%を完結させました。加えて、顧客満足度は5点中4.6を記録しています。
こうした動きが示しているのは、コンタクトセンターにおけるAI活用が、海外では「コスト削減ツール」から「顧客体験を向上させる戦略的基盤」へと変化したということです。一方で、日本国内ではまだ導入事例が限られており、海外の先行事例から学べることは多いといえます。
コンタクトセンターのAI活用 海外事例:修理受付・住宅サポート
vottiaが特に注目しているのが、修理受付と住宅サポート領域です。一見、AI化が難しそうに思えます。しかし、海外ではすでに実用レベルの成果が出ています。以下に代表的な事例を紹介します。
事例1:ADT(住宅セキュリティ)──AIで多段階の住宅サポートを自動化
ADTはSierraのプラットフォームを活用し、住宅セキュリティに関するサポートにAIを導入しました。具体的には、トラブルシューティング、パスワード変更、サービス訪問の予約変更、バッテリー注文などに対応しています。このように、住宅に密接した多岐にわたる問い合わせをAIが処理しています。
事例2:Everise──音声AIで65%のコールを自動完結
Everiseは音声AIエージェントをサービスデスクに導入しました。その結果、機器トラブルの対応や修理手配など、従来は人間が対応していた通話の65%をAIだけで完結させています。さらに、約600時間分の工数削減も実現しました。
事例3:Toyota──AIが能動的に電話をかけて修理予約を自動化
ToyotaはCognigyのプラットフォームで25体以上のAIエージェントを展開しています。特に注目すべきは、修理・点検のサービス予約をAIが顧客に能動的に電話して自動化している点です。その結果、予約の95%がAI経由で完了し、顧客満足度は98%を記録しています。
チャット×音声の両チャネル対応──海外の最新動向
修理受付では「電話しか使わない」という顧客層が依然として多く存在します。そのため、チャットだけではカバーできない層が残ります。一方で、音声AIが電話チャネルを担うことで、はじめてデジタル化の恩恵を全体に届けることができます。
実際に、大手エネルギー企業の事例(McKinseyレポートより)では、AI音声アシスタントの導入で請求関連の通話量を約20%削減しています。加えて、本人確認時間を最大60秒短縮する成果も出ています。
vottiaのmaestraがチャットだけでなく音声対応にも注力しているのは、こうした市場ニーズに応えるためです。詳しくは「通信・インフラのコンタクトセンターのAI導入:実現可能性と課題」もあわせてご覧ください。
マルチエージェント構成とは?──AIエージェントの精度を高める設計
マルチエージェント構成とは、1つの大きなAIに全てを任せるのではなく、専門タスクごとにAIを分業させる設計手法です。この方式により、各エージェントの精度が向上します。
たとえば、修理受付の場合は以下のような分業になります。
- 製品特定エージェント ── 型番・シリーズを特定する
- 症状ヒアリングエージェント ── 故障の症状を聞き出す
- 保証確認エージェント ── 保証期間・条件を照合する
- 修理手配エージェント ── 訪問日時の調整・発注を進める
実際に、Boschは社内の90以上の業務プロセスにまたがってAIエージェント「ROB」を25カ国に展開しています。これは、マルチエージェント構成の大規模な実践例です。このように、海外の先進的なコンタクトセンターでは、マルチエージェント構成が標準となっています。
vottiaのmaestraもマルチエージェント構成を基本思想としています。そのため、新しい業務領域への拡張やAIエンジンの入れ替えを柔軟に行える設計です。コンタクトセンターのAI活用において、この設計思想は今後ますます重要になるでしょう。
まとめ:コンタクトセンターのAI活用──海外から日本への展開
海外事例が示しているのは、コンタクトセンターにおけるAI活用が「シンプルなFAQ対応」から「修理受付や住宅サポートのような複雑な業務フロー」にまで拡大しているという事実です。
vottiaは「ヒトとAIの協奏で未来の顧客体験を生み出す」をコンセプトに、コンタクトセンター業界25年の知見を持つプロダクト責任者を中心にmaestraを設計しています。チャットと音声の両チャネル対応、マルチエージェント構成、そして現場起点の設計思想──海外の先行事例で証明されつつあるこれらのアプローチを日本のコンタクトセンターに届けていくのがvottiaの取り組みです。
カスタマーハラスメント(カスハラ)対策としてのAI活用については「カスハラ対策の新展開:AIエージェント×音声感情認識で従業員を守る」もあわせてお読みください。また、金融・公共分野の事例は「金融・公共のコンタクトセンターにAIは導入できるのか?」で詳しく紹介しています。
よくある質問(FAQ)
Q. AIエージェントとチャットボットの違いは?
A. チャットボットは定型的なQ&Aに特化しています。一方で、AIエージェントは複数ステップの業務フロー(ヒアリング→判断→手配)を自律的に進めます。さらに、音声対応や外部システムとの連携も可能です。
Q. 修理受付のような複雑な対応もAIで可能?
A. はい、海外ではすでに実用化されています。たとえば、Everiseは修理関連の通話の65%をAIで自動完結させました。また、ToyotaはAIによる修理予約の自動化で顧客満足度98%を達成しています。
Q. 音声AIの精度は実用レベルに達している?
A. 実用レベルに達しています。具体的には、大手エネルギー企業では音声AI導入で通話量20%削減・本人確認時間60秒短縮を実現しました。加えて、WeightWatchersではAIの「共感スコア」が人間スタッフを上回る結果も出ています。
Q. マルチエージェント構成のメリットは?
A. 専門タスクごとにAIを分業させることで、各エージェントの精度が向上します。さらに、新しい業務領域の追加やAIエンジンの入れ替え時にシステム全体への影響を最小限に抑えられます。
参考リンク
- Sierra AI 公式サイト・顧客事例
- Cognigy × Toyota 事例
- Cognigy × Bosch 事例
- Retell AI × Everise 事例
- McKinsey – コンタクトセンターのAI活用
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